一貫性の原理とは?クロージングを行き詰らせない営業の心理学

ルート営業の成績を上げるコツ

◆ この記事をおすすめする読者の皆様

● 一貫性の原理の原理とは何か知りたい人
● 一貫性の原理を営業にどのように使えるのか?を知りたい人

人は自分の行動や発言、態度を一貫したものにしたいという心理が働いています。この心理傾向を「一貫性の原理」と呼びます。

営業マンがお客さんと商談をするときに一貫性の原理を知っていると、商談を期待した方向に進められる可能性が高くなります。

ヨシゴマ
ヨシゴマ

商談の途中で不用意な質問をしてしまうと「一貫性の原理」が働いてしまい、お客さんが購入を決断してくれにくくなるよ。

◆ この記事でわかること

● 自分の考えを宣言してしまうと、宣言内容にあった行動や発言を取り続けようとする「一貫性の原理」の心理傾向が働く
● 一貫性の原理は「考える労力を減らしたい」や「他者から理性的と思われたい」などの思いが理由となり働いている

◆ この記事の結論

● 一貫性の原理の実例として紹介されている「フット・イン・ザ・ドア」などのセールステクニックを利用してお客さんに商品を購入させることはできない。
● ネガティブな方向に一貫性の原理が働き、商談が失敗に終わらないように注意を払うことが必要。

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一貫性の原理とは何か?

他者や自分自身から見た自分の行動や発言を一貫したものにしたいと思う心理傾向のこと。

ある決定や立場を他者に対して宣言すると、その宣言と矛盾しない行動を選択し続けるようになる。

人は自分が決めたことと矛盾しない選択をし続ける傾向があります。

たとえば、一度ある人を好きになるとその人の良い点ばかりが目に付くようになったり、逆に嫌いな人はさらに嫌いになる点を探してしまうようになります。

人の心理に一貫性の原理が働く理由には次のようなものが考えられます。

一貫性の原理が働く理由
  • 検討する選択肢が限定されるので考える労力が減るから
  • 周囲の人から「理性的な人」と思われた方が信用されやすいと考えるから

検討する選択肢が限定されるので考える労力が減る

選択肢の数が増えると考えることも増えるため疲れやすくなってしまいます。

検討する選択肢の数を減らすには、まず最初にYES/NOを決めてしまうことが有効になります。新しい情報が出てきても判断するスタンスが決まっていたら考える項目が少なくなります。

たとえば、最初に「No(断る)」と決めた案件なら、その後に追加される情報にも「No(断る)」というスタンスから断る理由を探すだけ済み、「Yes(引き受ける)」の選択肢を考慮する負担が一切なくなります。

レオナルド・ダ・ヴィンチも一貫性の原理に関連する次のような名言を残しています。

最後に断るよりも最初に断る方が簡単だ

レオナルド・ダ・ヴィンチ

周囲の人から「理性的な人」と思われた方が信用されやすいと考える

人間は自分の考えや行動の軸を持っている人間を高く評価し、逆にコロコロと意見を変える人は信頼されにくくなります。

また、他人からの説得によって簡単に自分の意見を変えるのは自尊心が傷つき、居心地が悪く感じるようになります。

以上の理由から、人は自分が口に出した意見に固執する方が心地よいと感じています。

一貫性の原理の実例 

営業現場で一貫性の原理を活かした営業テクニックとして「フット・イン・ザ・ドア」「ローボール・テクニック」が良く紹介されています。

しかし、これらの営業テクニックは実際には役に立たない机上の空論と悪徳商法の類です。

知識の1つとして紹介しますが、営業現場では使わないことを強くお勧めします。

フット・イン・ザ・ドア (Foot in the Door)

フット・イン・ザ・ドアは小さな「イエス」を積み重ねていき、最終的に大きな決断にも「ノー」と言えない心理状況を作り出す、というものです。

フット・イン・ザ・ドアの具体例として次のようなケースが紹介されています。

  1. 相手先のドアの向こうから「お話だけでも聞いてください」と話しかける
  2. 相手の様子をみて「パンフレットをご覧になりませんか?ご説明します」と話す
  3. 最終的な目標(商品の販売)を達成する

しかしヨシゴマの経験から言うとこのテクニックには机上の空論です。

営業マンの話す内容に興味がわいてきて商品の購入を決定することはあっても、「ドアを開けたから、パンフレットも見なきゃ」とか「パンフレットを見たから商品を買わなきゃ」とまで考えるお客さんはいません。

要らないものは途中で「ノー」と言われます

お客さんにとって営業マンは重要な人物ではないので営業マンから「この人は一貫性がある人だ」と思われるよりも、商品を購入するメリットの有無を重視しているからです。

ローボール・テクニック(Low Ball technique)

ローボール・テクニックは最初に好条件だけを提示して、その好条件を承諾してもらってから後出しで悪い条件を付け加えたり、好条件を取り除くセールストークです。

一旦承諾してしまった商談では条件が悪くなっていっても一貫性の原理が働きお客さんは購入の決断を変更しない、とするものです。

ローボール・テクニックの具体例として次のようなケースが紹介されています。

  1. お客さんに通常価格3000円だが初回特価980円の商品を勧め、購入に合意してもらう
  2. その後に「最低6回は購入するルール」であることを付け加える
  3. さらに送料として毎回200円が追加で必要であることを付け加える

このテクニックは悪徳商法や詐欺の手口です。お客さんは「騙された」と必ず思います。

また、営業マンの提示した条件の前提が変わっているので、お客さんも判断を容赦なく変え、契約は取り消されます。

一貫性の原理と一緒に知っておくべき心理傾向

一貫性の原理と一緒に知っておくことで営業マンの役に立つ心理傾向、営業テクニックには次の2つがあります。

テストクロージング

用語解説 テストクロージング

商談の途中でお客さんの購入の意思や購入を決める障壁になる事柄があるかをお客さんに直接確かめる営業テクニック。 通常のクロージングは商談の最後に最終判断として行うが、テストクロージングは商談の途中でお客さんの現時点での考えを確認することを目的として行う。 

ヨシゴマの20年の営業マン経験を振り返ると一貫性の原理は営業マンにとって厄介な心理傾向として登場します。

一貫性の原理は特にお客さんに購買を決断してもらうクロージングの場面で登場します。

「買って下さい」というクロージングにお客さんが「ノー」と言ってしまうと一貫性の原理がネガティブに働き始め、応酬話法で対応しても判断を変えてもらうことはできなくなります。

一貫性の原理をネガティブに働かせずにクロージングを成功させるには「テストクロージング」が大変有効です。テストクロージングでは「最終判断ではない、お客さんの現在の考えを聞かせてもらう」ことができるので、ネガティブな一貫性の原理が働くことがありません。

テストクロージングについてはこちらの記事で紹介しているのであわせて読んでください。

返報性の原理

クロージングに対してお客さんが「ノー」と言わないためには、商品のメリットを理解してもらうことに加えて、お客さんが営業マンの好意に「お返しをしたい」と思っていることが役に立ちます。

人間は論理的な側面と感情的な側面をあわせ持っています。

「お返しをしたい」と思う心理傾向は返報性の原理と呼ばれています。返報性の原理を理解しているとお客さんから好意のお返しをしてもらいやすくなります。

返報性の原理についてはこちらの記事で詳詳しく解説しているのであわせて読んでください。

一貫性の原理を営業で活かすコツ

一貫性の原理を営業で活かすコツは「ネガティブな一貫性の原理が働くのを避ける」ように立ち振る舞うことです。

お客さんにとって営業マンは重要な人物ではないので、営業マンに見栄を張る必要はありません。そのため、営業マンから一貫性がない人だと思われるのが怖くて気が進まない契約をしてくれるケースはほとんどありません。

その一方で「営業マンから舐められたり、見下されるような行動はとりたくない」と考える傾向があります。

その結果、営業マンのクロージングにお客さんが「ノー」と答えるとその後に営業が何を言っても考えを変えてはくれなくなるというネガティブな形で登場するわけです。

営業マンは「お客さんが最終判断としてノーと言ってしまうと、考えを変えてもらうのは難しい 」と覚えておくことが必要になります。

おすすめの一冊

一貫性の原理を扱ったおすすめ書籍にはロバート・B・チャルディーニの「影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか?」(ロバート・B・チャルディーニ、誠信書房)があります。

行動心理学の名著と呼ばれ、加筆、修正が加わり現在は第三版となっています。

本書では一貫性の原理を含む人の態度や行動を変化させる心理傾向について解説されているので一読することをお勧めします。

営業マンなら誰でもお客さんの心理に興味があると思います。お客さんの心理を心理学の観点からまとめた「[買わせる]の心理学 消費者の心を動かすデザインの技法61」(中村和正、エムディエヌコーポレーション)は読んでおくことを強く勧める一冊です!

心理学の分野にはいろいろな分野がありますが、本書では消費者の購買に関連する心理学だけがまとめられているので、営業マンが知りたいことだけを効率よく知ることができます。

心理学の通りにすべてのお客さんが動いてくれるわけではないところも営業の醍醐味の一つですが、本書に書かれていることは「あぁ、確かにこんな気持ちになる」と思えることも多く「知っておいて損はない」レベルの情報が満載です!

まとめ

人の心理傾向に一貫性の原理がある理由には次の2つがあります

  • 周囲の人から一貫している人物だと評価してもらいたい
  • 選択肢が限定されるので考える労力が少なくなる

営業現場では一貫性の原理は「厄介な心理傾向」として出会うことが多くあります。

たとえば、一度クロージングに「No」と回答されるとその後にどんなに言葉を重ねてもお客さんから「YES」を引き出すことは難しくなります。

営業マンはテストクロージングでお客さんの考えを推し量りながら、お客さんのココロにネガティブな一貫性の原理が働くのを避けながら買わない理由を1つ1つ取り除いていきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

本ブログでは営業で本当に使える心理学に基づくテクニックを営業場面別に紹介しています。

  • 初対面の信頼構築に役立つ営業の心理学
  • お客さんの説得に役立つ営業の心理学
  • おすすめの商品を選んでもらえる営業の心理学
  • 提案を受け入れやすくする営業の心理学
  • クロージングを行き詰らない営業の心理学
  • 契約後のキャンセル予防に役立つ営業の心理学

他の営業場面で本当に使える心理学もあわせてお読みください。

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