◆ この記事をおすすめする読者の皆様
● 営業で「聞く技術」がどうして大切なの?と疑問に思う人
● 「聞く技術」って具体的にはどんな技術のこと?と疑問に思う人
営業マンはお客さんが気づかずに抱えている問題を解決するので、お客さんの状況を正しく知るためには「聞く技術」がとても大切になります。一般的に営業は「話す技術」が重要だと誤解を受けがちですが「聞く技術」の方が圧倒的に重要です。

営業一筋20年のヨシゴマが営業マンにとっての「聞く技術」の大切さを力説します!
◆ この記事でわかること
● 営業で「聞く技術」は「考える技術」や「話す技術」よりも大切な理由
● 質問を通してお客さんの購買意欲を高める方法
◆ この記事の結論
営業では「聞く技術」がもっとも大切な理由

営業では「聞く技術」が「考える技術」や「話す技術」よりもずっと大切です。
それは営業マンが解決する課題はお客さんの中にあるからです。
お客さんの状況を理解せずに正しい商談を進めることはできません(押売りになります)。
さらに、人は自分が気づいた問題は解決したいと思うからです。
お客さん自身で気付いた問題には積極的に取り組みやすくなりますが、営業マンが「あなたの問題はこれです」と伝えるの問題には反感を持つだけです。
営業マンはお客さんが気付かずに抱えている問題を「聞く技術」で掘り出します。
このプロセスはお客さんが「営業マンに言われたんじゃなく、自身で気付いた」と思ってもらえるようにすることがとても大切になります。

商品を購入する原動力はお客さんの中にあるよ。営業マンは「聞く技術」を使ってお客さんが気付く手伝いをするんだよ。
人間は感情の生き物であることを忘れない!

営業はお客さんの感情や機嫌を損ねると一気にハードモードになります。これは人間は誰でも感情の動物だからで「感情で買って、理論で納得する」という言葉があるくらいです。
人間には論理的な部分と感情的な部分がありますが、イメージとしては下の図のように1階が感情的な部分で2階が論理的な部分の2階建ての建物のようになっています。

感情をこじらせてしまうとどんなに理屈に合った理論を言っても、「言っていることはわかるけど、何だかイヤだ」となってしまいます。

お客さんには丁寧な言葉遣いや態度で対応するから嫌われないよね!?
たとえ、言葉遣いや態度が丁寧でもあることをすると感情がこじれやすくなります。
それは「営業マンから問題を指摘されること」です。丁寧な物言いでも機嫌を損ねる可能性があるので十分に注意をする必要があります。
しかし、営業マンはお客さんが抱えている問題を解決するために商品を購入してもらうことが目的なので、お客さんが問題に気付いてくれないことに話が進みません。
これを回避するために「お客さん自身が自分で考えて問題に気付いた」と思ってもらえるように商談が進むように「聞く技術」を活用するのです。
営業マンがお客さんの話を聞く前にする心の準備
お客さんの感情面を安定させるには営業マンの心の準備が大切です。
先ほどの図のように1階部分が感情面であることを考えれば、まずは感情面を優先する理由は理解しやすいのではないでしょうか?
相手の感情を安定させる最も有効な方法は「相手の話を聞く」ことです。耳障りのよいお世辞を「話す」ことよりもずっと有効です。
お客さんの話を聞くときの心構えのポイントは次のようになります。
- テクニックではなく真摯な関心を向ける
- 理解することと納得することは違うことを意識する~自分の価値観を封印する~
- 成約率10割を目指さず余裕を持って聞く~営業ノルマを封印する~
テクニックではなく真摯な関心を向ける
聞く技術を支えているのはテクニックではなくお客さんと真摯に向き合うマインドです。
お客さんと真摯に向かい合うマインドには次のような特徴があります。
- 相手のことを理解しようとしている
- 相手に良くなってほしいと本心から思っている
- 相手の立場になって考えることができる
少しスピリチュアルで宗教的な印象を持つかもしれませんが、「お客さんのために役に立ちたい」という考えを根底に持っていることが必要です。
このマインドがないとお客さんのためではなく、営業マンのノルマのために売り込んでいる印象をどうしても持たれやすくなってしまいます。
理解することと納得することは違うことを意識する ~自分の価値観を封印する~
お客さんの話を聞いていると、口をはさみたくなってしまうときがあります。
たとえ実際に口を挟まなくても営業マンが違和感を感じていることはお客さんには伝わると思った方がよいでしょう。
お客さんは自分の話を評価されていると思うと話しづらさを感じるようになります。
相手の話を中立な気持ちで聞くためには「理解することと納得することは別物であること」を意識する必要があります。
理解と納得の違いは自分の評価が入っているかどうかの違いがあります。営業マンはお客さんの考えを理解する必要はありますが、自分の評価を加えて納得する必要はありません。
営業マンは自分の価値観はいったん脇に置いて、全力でお客さんの考えを理解することに集中します。
成約率10割を目指さず余裕を持って聞く ~営業ノルマを封印する~
営業マンがお客さんの話を中立的に聞けなくなる原因の1つ(もしかしたら最大の原因)が営業ノルマの存在です。
営業マンが「何が何でも商品を買ってもらおう」と思っているのをお客さんは簡単に気付きます。
これへの対策は単純です。
売りたい商品がお客さんの価値観と相いれない時には引き下がる覚悟を持つだけです。これだけでお客さんの話を理解する心の余裕が生まれやすくなります。
この考え方は「Win-Win or No Deal」として知られています。No Deal(ノー・ディール)とは取引をしないという意味です。
No Dealの場合は「お互いに納得できないということが、理解しあえた」という結論になります。ここで大切なのはNo Dealになるのは営業マンがWin-Winになる提案を出せない能力の低さが原因だということです。
営業マンの能力の低さを棚に上げてお客さんに圧力をかけて売り込むのはお門違いです。それよりも、良い提案ができない自分の能力の低さを反省することがおすすめです。
売りたい気持ちを抑え、万が一売れないときには自分の能力不足と反省する覚悟があれば、お客さんの言葉に耳を傾けることができるようになります。
ヒアリング・積極的傾聴に必要な「心構え」についてはこちらで解説しているのであわせて読んでください
ヒアリング・積極的傾聴に役に立つ技術

営業マンがお客さんの話を聞く心の準備ができたら、次は実際にお客さんから話を聞くようにします。話を聞くときのコツはお客さんに積極的に話してもらえるような状況を作り出すことです。
営業は「お客さんが自分の問題に気付き、解決しようと思うプロセス」が必要なので、お客さんが積極的に話してもらえばもらえるほど商談の成功確率が上昇します。
ヒアリングのポイントは次のようになります。これらについて解説します。
- お客さんが話しやすい話題や受け答えを混ぜる
- 本音を予想しながら聞く
- お客さんに「問題」を気付かせる質問をする
お客さんが話しやすい話題や受け答えを混ぜる
初対面のときなどお客さんが緊張していて積極的に話をしてくれないときには、話しやすい話を混ぜたり雑談でウォーミングアップをしてもらうことが有効です。
お客さんには「この営業マンはしっかり話を聞いてくれる!」と感じてもらいたいので、次のようなリアクションを取るようにします。
● 適度にうなづいたり、相槌を入れる
● 小手先のテクニックに頼りすぎない
● お客さんの発言を「言い換え」たり「要約」をする
うなづいたり、相槌を適度に入れると相手は話しやすくなります。
ただし、やりすぎるとわざとらしさが出てしまうので逆効果です。特にミラーリング(動きを真似る)やバックトラッキング(オウム返し)はわざとらしさを感じさせやすい小手先のテクニックなになります。
お客さんの話をしっかりと聞いて自分なりに内容をまとめて話すと「しっかり聞いてくれている!」と思ってもらいやすくなります。
雑談のコツについてはこちらの記事で解説しているのであわせて読んでください。
本音を予想しながら聞く
お客さんが本音をストレートに話してくれないことはよくあります。
むしろ会話の本筋よりも、言葉の端々に本音が現れるので、細かい部分も聞き漏らさないように注意して本心を予想しながら聞くようにします。
会話の端々のちょっとした発言をつなぎ合わせると、相手の本音がわかるケースは多くあります。
お客さんに「問題」を気付かせる質問をする
営業マンが解決する「問題」は「お客さんの中」にあり、それを解決するのは「お客さん自身」です。
SPIN営業術で知られている以下の4つの質問はお客さんが「問題」に気づくのを助けます。
- S:Situation Questions(状況質問):現状を確認する
- P:Problem Questions(問題質問):潜在的に抱えている問題を明らかにする
- I:Implication Questions(示唆質問):問題を解決したいと思ってもらう
- N:Need-payoff Questions(解決質問):解決策を受け入れてもらう
これら4つの質問を効果的に使うことでお客さんの購買意欲を高めていきます

商品を購入する原動力となる「問題」も「意欲」もお客さんの中にあるから、営業マンは質問でそれらを引き出すんだよ。
SPIN営業術についてはこちらで解説しているのであわせて読んでください
法人では部署ごとに重視する点が異なっていることを忘れない
法人営業では登場人物が多くなるので個人営業よりも調整が必要になることがあります。
中小企業の社長自らが話を聞いてくれれば決裁権のことを気にすることなく、社長の鶴の一声ですべてが決まることが多々あります。このようなケースでは社長の話をしっかり聞けば商談成立に近づくヒントが得られます。
しかし、ほとんどの場合は決裁をもらうまでに担当者だけでなく、上司や経理部、社長といった複数人から承認決裁を取る必要があります。
組織はそれぞれの役割によって部署が分かれているので、それぞれの立場や役職によって、注目する点が異なり、別々のニーズを持っています。
一例をあげるとこんな感じになります。
● 現場担当者:使い勝手を重視
● 購買担当者:コスト面を重視
● 経営幹部:組織全体への総合的な貢献を重視
場合によっては担当者間のニーズが相容れずに、各担当者間での調整が必要になることがあります。先ほどの例でいえば「使い勝手は良いけれど、コストは高い商品」では現場担当者からの意見と購買担当者からの意見は大きく異なるはずです。
組織内で利害が衝突する場合は組織内での調整が必要になりますが、基本はお客さんの考えをしっかり聞いて、理解しておくことです。これが正しく理解できていないと調整はうまくいきません。
心理学を活用する

お客さんの本音を予想するのには心理学の知識を知っておくことは有意義です
ただし、心理学はあくまでもテクニックなので、やりすぎるとお客さんの反感を買ってしまうので注意が必要です。
商談を進めるときに活用できる心理学には次のようなものがあります。
- アンカリング効果
- 一貫性の原理
- ウインザー効果
- ジャムの法則
- 初頭効果
- 終末効果(親近効果)
- ストーリーテリング
- スノッブ効果
- スリーパー効果
- 想起集合
- テンションリダクション効果
- 認知的不協和
- バイヤーズリモース
- バンドワゴン効果
- フレーミング効果
- ブーメラン効果
- プロスペクト理論
- 返報性の法則
- マッチングリスク意識

お客さんは1人1人感じ方が異なるから、心理学はあくまで補足的なスキルだよ
営業に使える心理学についてはこちらで解説しているのであわせて読んでください
おすすめの一冊 新版 営業の「聴く技術」 SPIN「4つの質問」「3つの説明」
営業マンにとってもっとも大切な聞く技術をまとめたおすすめの書籍は『新版 営業の「聴く技術」SPIN「4つの質問」「3つの説明」』(大堀 滋、古淵 元龍、ダイヤモンド社)です。
営業マンはお客さんの言葉にしっかりと耳を傾けて、お客さんのココロがこちらに傾いてから商品の説明をすることをすすめています。
お客さんは自分で考え、自分の言葉で話すときに「自分の言葉で自分自身を説得する」現象が起きます。本書はSPIN営業術の質問を使ってお客さんの考えを「聴く」ことでこの現象を引き起こすプロセスを解説しています。
法人営業でも個人営業でも大変役に立つ情報が詰まっているので手に取って読んでみることを強くおすすめする一冊です!
まとめ
営業の「聞く技術」について解説をしました。
- 自分が気づいた問題は解決したいと思うので気づかせるための質問が大切
- 小手先のテクニックに頼らずにお客さんの立場に立って理解を示すようにする
- SPIN営業術につながる質問を組み込むようにする
一般的に営業は「話す技術」が大切と思われがちですが、お客さんが解決するべき「問題」も解決に必要な「意欲」もお客さんの中にあるので、営業マンの「聞く技術」はずっと大切な技術になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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