◆ この記事をおすすめする読者の皆様
● 心理学に裏付けられた営業テクニックを知りたい人
● 1つ1つの心理学だけではなく、営業の場面ごとに注意すべき複数の心理学を知りたい人
営業マンはお客さんのココロの動きを敏感に感じ取って、お客さんに「買いたい!」と思ってもらうことが役割です。
心理学は人間のココロの動きを予想するのに役に立つので営業マンであれば知っておくべき知識です。
しかし、1つ1つの心理学をバラバラに覚えていても、営業現場ではあまり役に立ちません。
営業で出くわす場面ごとに必要となる複数の心理学をまとめて使えれば、さらにお客さんのココロに寄り沿えるようになります。

営業一筋20年のヨシゴマの営業経験を通じて学んだ「営業現場で出くわす場面ごとに役立つ心理学」を紹介するよ。
◆ この記事でわかること
● 営業マンが現場でよく出会う6つの場面で役立つ複数の心理学がまとめてわかる
● それぞれの場面で「やるべきこと」「やってはいけないこと」がわかる
営業現場では「学問としての心理学」はほとんど使えない
学問としての心理学は「●●効果」「▲▲理論」などと細かく分類されていますが、営業現場ではばらばらに心理学の知識を持っていてもほとんど役には立てられません。
営業現場で出くわす場面ごとにいくつかの心理学をまとめて考えることができると一気に役に立つようになります。
お互いに関連している心理学をまとめて使うことでお客さんのココロの動きをより正確に予測できるようになり、本当の意味で心理学を営業に役立てることができるようになります。
【営業場面別】心理学に基づく営業テクニック6選
心理学が使える営業の場面には次の6つの場面があります。
それぞれの場面で有効な心理学と営業テクニックがあるのでまとめて覚えておくことで初めて営業マンの役に立ちます。
- 初対面のお客さんとの信頼構築に役立つ心理学
ザイアンス効果、セブンヒッツ理論、ハロー効果 - お客さんを説得するときに役立つ心理学
ウィンザー効果、第三者話法 - 営業マンのおすすめを選んでもらうときに役立つ心理学
ジャムの法則、ゴルディロックス効果、アンカリング効果 - 営業マンの提案を受け入れてもらうときに役立つ心理学
スリーパー効果、ブーメラン効果、両面提示の法則 - クロージングで行き詰らないための心理学
一貫性の原理、テストクロージング、返報性の原理 - 契約後のキャンセルを予防するのに役立つ心理学
バイヤーズリモース、テンションリダクション効果
初対面のお客さんとの信頼構築に役立つ心理学に基づくテクニック
初対面のお客さんと会うときに気を付けないといけないポイントは「人は初めて見るものには警戒感を抱く心理傾向がある」ということです。
このケースで役に立つ心理学と営業テクニックには次の3つがあります。
心理効果/営業テクニック | 内容 | 活用方法 |
ザイアンス効果 | 初めて見るものに警戒心を抱いていた人が、単純な接触回数を重ねるにつれ親近感を抱くようになる心理傾向のこと。ただし10回くらいで頭打ちになる。 | 信頼構築が進むまでは単純な接触を意識的に行い警戒心を弱めていく |
セブンヒッツ理論 | 一般的に人は情報に3回接するとその情報を認知するようになり、7回接すると購買に結び付くようになる | 3回目以降に詳しい紹介をして7回目で購買を勧める |
ハロー効果 | ある対象を評価するときに、顕著に優れた特徴に引きずられてほかの特徴の評価が高められる心理効果。 | 外見、話し方、立ち居振舞いなどを細部まで整える |
「営業は足で稼げ!」という言葉に時代遅れの営業スタイルだと反発心を持つかもしれませんが、初対面のお客さんに対しては接触回数は重要な役割を担っています。
初対面の印象を良くしたり、適切なタイミングで購買を勧めることで契約に至る可能性を高めることができます。
もっと詳細な解説を知りたい人はこちらの記事をあわせてお読みください。
お客さんを説得するときに役立つ心理学に基づくテクニック
ほとんどのケースでお客さんは営業マンの言葉を鵜呑みにしてはくれません。営業マンとお客さんとの間に明らかな利害関係があるので「商品を買って欲しくて調子のいいことを言ってるんじゃないの?」と疑う気持ちがあるためです。
このケースで役に立つ心理学と営業テクニックには次の2つがあります。
心理効果/営業テクニック | 内容 | 活用方法 |
ウィンザー効果 | 相手に直接的に伝えた情報よりも、利害関係のない第三者から発信された情報の方が間接的に伝わる方が信憑性が増すという心理効果 | ・営業マンの代わりに商品を勧めてくれるファンを作る ・第三者話法を使う |
第三者話法 | 営業マンが伝えたい情報を「無関係な第三者からのクチコミ情報」として間接的に伝える営業テクニック | ・お客さんを間接的にほめていい気分にさせる ・決心できずにいる顧客の背中を押す |
ウィンザー効果は営業マンと利害関係にない第三者が商品をほめたり、勧めたときにおこる心理効果です。
営業マンに代わって商品を勧めてくれる顧客をロイヤル・カスタマーと呼びます。ウィンザー効果はとても強力な心理効果ですが、このままで営業マンのテクニックとして使うことができません。
ウィンザー効果を意図的に使えるようにした営業テクニックが「第三者話法」です。
第三者話法を効果的に使うためには「お客さんの状況にぴったりの第三者」のエピソードを紹介する必要があります。もちろん嘘は厳禁です。
もっと詳細な解説を知りたい人はこちらの記事をあわせてお読みください。
営業マンのおすすめを選んでもらうときに役立つ心理学に基づくテクニック
お客さんに選択肢を与えてお客さんに選んでもらうケースでのポイントは「お客さんが自分の意思で選択した」と思ってもらったうえで、「営業マンが選んで欲しいもの」を選んでもらえるように誘導することです。
お客さんが選択肢から選ぶときの心理傾向を知っていると、お客さんの行動をコントロールできるようになります。
このケースで役に立つ心理学と営業テクニックには次の2つがあります。
心理効果/営業テクニック | 内容 | 活用方法 |
ジャムの法則 | 検討できる選択肢の数が増えすぎると選択をするのが難しくなるという心理傾向 | お客さんに選択肢を提示するときには3~5個の項目を目安にする |
ゴルディロックス効果 | 3段階の選択肢があるときには真ん中が選択されやすくなる心理傾向 | 営業マンが買って欲しい商材を真ん中に置いた選択肢を提示する |
アンカリング効果 | 交渉の提案者が何らかの数値(アンカー)を先行して提示した際に、交渉相手の判断基準がゆがめられ最終的な妥結額がアンカーに近づく心理傾向 | 相場感がないお客さんには値段が高い選択肢から順に提示する |
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営業マンの提案を受け入れてもらうときに役立つ心理学に基づくテクニック
人は誰でもプライドを持っているので、やすやすと他人からの指示に従って行動することは面白くないと感じる傾向があります。
営業マンはお客さんのプライドが邪魔にならないように工夫しながら商品の購入を提案し、同意をしてもらう必要があります。
このケースで役に立つ心理学と営業テクニックには次の3つがあります。
心理効果/営業テクニック | 内容 | 活用方法 |
スリーパー効果 | 信頼性が低い情報源から得た情報であっても、時間の経過とともに情報源が忘れられて情報の内容だけが記憶に残り、情報源の信頼性の低さが減少していく心理傾向のこと | 時間をかけて営業マンの提案をお客さんの心に刷り込んでいく |
ブーメラン効果 | 自由を制限されそうな他者からの説得や強制に対して逆の行動や態度をとりたいと思う心理傾向のこと | お客さんを短時間で説得することは逆効果と肝に銘じる |
両面提示の法則 | メリットだけではなくデメリットも合わせて紹介することで、メリットだけを紹介するよりも信頼感や好感度が高まる心理傾向のこと | 商品を紹介するときには必ずデメリットもセットにして紹介する |
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クロージングで行き詰らないための心理学に基づくテクニック
クロージングはお客さんに商品の決断をしてもらうとても大切な場面です。
お客さんが「買う」と判断をしてくれれば問題はありませんが、「買わない」と判断をされるとその後に判断を変えてもらうことはほぼ不可能で行き詰ってしまいます。
営業マンはお客さんの心のネガティブな反応をあらかじめ予測し、クロージングが行き詰らないように地雷を避けるようにして商談を進めていく必要があります。
このケースで役に立つ心理学と営業テクニックには次の3つがあります。
心理効果/営業テクニック | 内容 | 活用方法 |
一貫性の原理 | 自分の行動と発言が誰から見ても矛盾せずに一貫したものにしたいと思う心理傾向 | 安易なクロージングで断られると挽回不可能と肝に銘じる |
テストクロージング | 商談の途中で「最終判断ではないお客さんの現在の考え」を聞く営業テクニック | 一貫性の原理がネガティブに働くのを避けながらお客さんの考えを聞き出す |
返報性の原理 | 他者から良いふるまいを受けた際にその好意に報いる態度をとって、相手に好意を返そうとする心理法則 | クロージングをする前に商品の訴求に加えて、十分な好意をお客さんに与える |
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契約後のキャンセルを予防するのに役立つ心理学に基づくテクニック
お客さんに選択肢を与えてお客さんに選んでもらうケースでのポイントは「お客さんが自分の意思で選択した」と思ってもらったうえで、営業マンが選んで欲しいものを選んでもらえるように誘導することです。
このケースで役に立つ心理学と営業テクニックには次の2つがあります。
心理効果/営業テクニック | 内容 | 活用方法 |
バイヤーズリモース | 商品の購入後に自分の決断に不安を感じ、返品や解約を検討するきっかけとなる心理傾向 | 購入後のアフターケア(定期連絡、サンクスレター等)を行う 購入直後から予防のための対策を打つ |
テンションリダクション効果 | 購入契約の直後に通常時よりも注意力が低下した状態が訪れる心理傾向。通常よりも他者の意見を受け入れやすくなっている。 | バイヤーズリモースを見越して「お客さんは正しい判断をした」と印象付ける |
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おすすめの一冊
営業マンは1つ1つの心理学をバラバラに知っていても営業現場で活かすことはできません。
営業マンが知っておくべき心理学だけをまとめた心理学の本「〔買わせる〕の心理学*消費者の心を動かすデザインの技法61」(中村 和正、エムディエヌコーポレーション)は広く浅く辞書的に使うことができるのであわせておススメします!
営業マンはお客さんのココロの動きをコントロールする業務です。心理学を学べば心の動きの傾向を理解しやすくなります。
まとめ
心理学はお客さんのココロの動きを予想するのに役に立ちますが、1つ1つの心理学をバラバラに覚えていても営業現場ではあまり役に立ちません。
営業の場面ごとにいくつかの心理学、営業テクニックをまとめて意識することでお客さんのココロの動きをコントロールしやすくなります。
営業の場面によっては営業マンの味方になってくれる心理傾向と厄介な敵になる心理傾向があるので、それぞれの特徴を覚えて営業現場で活かせるようにしてください。
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