◆ この記事をおすすめする読者の皆様
「返報性の原理」という言葉は難しく聞こえるかもしれませんが、「他人から好意を受けるとお返しをしないと居心地が悪くなる」という日常的に良く感じる心理傾向のことです。
返報性の原理は営業マンとお客さんとの間ででも成立するので、営業マンが返報性の原理を理解しておくことは営業の成果を上げるうえで役に立ちます。
特に、お返しをしたがらないTaker気質の人が一定数いることや、営業マンはGiveしているつもりでもお客さんにとっては無価値なものを提供している場合など気を付けるべきことがあります。

営業マンが「返報性の原理」を営業現場で活かすコツを営業一筋20年のヨシゴマが解説します
◆ この記事でわかること
◆ この記事の結論
返報性の原理とは何か?
他者から良いふるまいを受けた際にその好意に報いる態度をとって、相手に好意を返そうとする心理法則のこと。
返報性の原理は誰もが日常生活でよく感じている心理法則です。別の言葉で説明するのであれば、Give & Takeの精神のことです。
例えば、誰かに手伝ってもらったり価値のあるものをもらったら「お返しをしてあげたい」と思い、逆に意地悪なことをされたら「やり返してやりたい」と思う心理傾向のことです。
営業マンはお客さんが感謝してくれる行動をGiveすることでお客さんから「お返しをしてあげたい」と考えてもらい商材を購入してもらうことを目指します。
他者の好意へのお返しのパターンは3つに分類できる
他者の好意に対して自分がどの程度お返しをするかで3種類にレベル分けをすることができます。
(参照書籍:GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 三笠書房)
① GIVER(ギバー:自分が受ける好意より他者に与える好意の方が多い人、全体の25%)
②TAKER(テイカー:自分が与える好意より他者から受け取る好意の方が多い人、全体の19%)
③MATCHER(マッチャー:他者から与えられた好意と同量の好意を返す人、全体の56%)
お客さんが①のGiver(ギバー)の場合は営業マンにとってとても大きな財産になります。お客さんの心が変わらないように営業努力をし続けることが必要です。
営業マンが相手にするお客さんの大多数は③のMatcher(マッチャー)になります。Matcher(マッチャー)は「良いことをしてくれたらその分だけお返しをする」人々ですので、営業マンはお客さんの喜ぶことをして、そのお礼として自分が売りたい商品を購入してもらいます。
営業マンが避けたい相手は②のTaker(テイカー)です。営業現場では決定権がないにも関わらずいろいろと要求をしてくる典型的なTaker(テイカー)がいます。営業マンは相手のGiveの能力をもとにキーマンを見極めることが重要です。
返報性の原理と一緒に知っておくべき心理傾向
返報性の原理と一緒に知っておくべき心理傾向に「一貫性の原理」があります。
他者や自分自身から見た自分の行動や発言を一貫したものにしたいと思う心理傾向のこと。
ある決定や立場を他者に対して宣言すると、その宣言と矛盾しない行動を選択し続けるようになる。
お客さんに十分なGive(ギブ)が不十分な状態で焦ってクロージングをすると、お客さんからは「ノー」と言われてしまいます。
お客さんが一度「ノー」と言ってしまうと、一貫性の原理が心の中で働くために、その後にGive(ギブ)を続けても態度は変わりにくくなってしまいます。
お客さんにクロージングをかけるときには十分な事前準備が必要になります。
一貫性の原理についてはこちらの記事で詳しく解説しているのであわせて読んでください。
返報性の原理を営業で活かすコツ
返報性の原理を営業現場で活かすために営業マンがするべきことは次のようになります。
- Taker(テイカー)のお客さんを避ける
- Giver(ギバー)とMatcher(マッチャー)のお客さんに「好意」を伝える
営業マンの好意にしっかりと応えてくれるGiver(ギバー)やMatcher(マッチャー)に好意を伝える大切さは言うまでもないと思います。
営業マンを利用しようとしているTaker(テイカー)を避けるのは大切ですが、安易に判断をするとビジネスチャンスを逃しかねません。Taker(テイカー)は全体の20%ですから5人に1人程度です。
「お客さんがTaker(テイカー)なのか、営業マンの力不足なのか?」を正しく見極める必要があるわけです。
返報性の原理を営業現場で活かすには、お客さんがお返しをしたいと思える好意の「質」と「量」が十分に足りているか?を確認するようにします。
お客さんに「質の高い好意」を伝えられているか?

営業マンから「質の高い好意」を受けるとお客さんはお返しをしたいと思いやすくなります。
営業マンはお客さんの立場になって「 お客さんがお返しをしたいと思える、質の高い好意を伝えられているか? 」を振り返って考える必要があります。
- お客さんが欲しくないモノ(たとえ高価でも)をプレゼントして自己満足になっていないか
- 熱心な営業マンのつもりがゴリ押しのウザい営業マンになっていないか
- お客さんが困っている課題を解決できる提案ができているか
お客さんにとって価値のないものや迷惑なものを営業マンからGiveされても、お客さんはその恩に報いようとはしません。そもそも恩を感じていないからです。
むしろ「不要なものを受け取ってあげているんだから」とか「忙しい中、時間を割いて会ってあげているんだから」とお客さんの中ではGive & Takeが完了していることがあります。
「こんなにお客さんのためになることをやっているのに…」「お客さんがTaker気質なので売り上げにつながりません…」と嘆く前に、自分が本当にお客さんの役に立つものをGiveできているのかを見直してみることが必要です。
お客さんに「十分な量の好意」を伝えられているか?

お客さんからのお返しを期待するためには、お客さんが「お返しをしないと居心地が悪い」と思うまでの量の好意を与え続ける必要があります。
お客さんがお返しをしたいと思うようになるのに必要な行為の総量は人それぞれですので、どの程度の好意を与えればお返しが返ってくるのかは、、、事前にはわかりません。
営業マンの仕事が正解だったかどうかは結果が出た後にしかわかりません。事前に正解がわからないところが営業が難しい理由の1つです。
おススメの一冊
「返報性の原理」という用語が登場するのは「影響力の武器 なぜ、ひとはうごかされるのか(誠信書房)」ですが、その本質であるGive アンド Takeを理解するには「GIVE & TAKE 「与える人」こそが成功する時代(アダム・グラント、三笠書房)がおススメです。
本書の中でGiver(与える人)は『成功からもっとも遠い人』であると同時に『成功に最も近い人』と記述されています。一見すると矛盾するこの両方の側面を分けている要素は何なのか?はぜひ本書を手に取って確認してみてください。
一読の価値のある一冊ですよ。
営業マンが知っておくべき心理学だけをまとめた心理学の本「〔買わせる〕の心理学*消費者の心を動かすデザインの技法61」(中村 和正、エムディエヌコーポレーション)は広く浅く辞書的に使うことができるのであわせておススメします!
まとめ
他者から好意を受け続けると居心地が悪くなり「お返しをしたい」と思うようになります。この心理傾向を「返報性の原理」と呼びます。
返報性の原理を営業で活かすためには以下の2点に気を付ける必要があります。
- 目の前のお客さんが約20%いるTAKER気質の人ではないか?
- お客さんからお返しをしてもらえるようなGiveを適切に、十分量できているか?
営業マンが自己満足するだけの営業活動を繰り返しても、お客さんからはお返しをしてもらえることは絶対にないことだけは忘れず、お客さんのニーズを把握できるように試行錯誤をすることが肝要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本ブログでは営業で本当に使える心理学に基づくテクニックを営業場面別に紹介しています。
- 初対面の信頼構築に役立つ営業の心理学
- お客さんの説得に役立つ営業の心理学
- おすすめの商品を選んでもらえる営業の心理学
- 提案を受け入れやすくする営業の心理学
- クロージングを行き詰らない営業の心理学
- 契約後のキャンセル予防に役立つ営業の心理学
他の営業場面で本当に使える心理学もあわせてお読みください。
コメント